双極性障害について調べていると「一生治らない」という言葉を目にして、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
確かに双極性障害は再発しやすく、完全に治すのが難しい病気とされています。しかし「一生治らない＝絶望」というわけではありません。
医療の現場では完治と寛解（症状が安定し生活に支障がない状態）を区別して考えます。適切な治療とセルフケアを続けることで、安定した生活を長期的に送っている人も多くいます。
本記事では「双極性障害は本当に治らないのか？」という疑問に答えながら、治療の柱・再発予防の工夫・家族や周囲のサポート方法をわかりやすく解説します。
「一生治らない」という言葉に振り回されず、正しい知識を持って前向きに病気と向き合うためのヒントをお伝えします。
心の病気は放置すると重症化する恐れがあるため、早期の治療をお求めの方は当院までご相談ください。
双極性障害は「一生治らない」と言われる理由
双極性障害は「一生治らない」と表現されることが多い病気です。
その背景には、再発しやすさや完治の難しさといった医学的特徴が関係しています。
ただし「治らない＝希望がない」という意味ではなく、適切な治療とセルフケアで症状を安定させ、普通の生活を送ることは十分可能です。
ここでは、なぜ双極性障害が「治らない病気」と言われるのかを整理して解説します。
- 再発しやすい病気の特徴
- 完治が難しいとされる医学的背景
- 「一生付き合う病気」という表現の真意
正しく理解することで、不安を和らげ前向きな治療の一歩につながります。
再発しやすい病気の特徴
双極性障害は躁状態と鬱状態を繰り返すことが特徴であり、一度症状が落ち着いても再び発症することがあります。
特にストレスや生活リズムの乱れ、服薬中断などがきっかけで再発しやすく、長期的な経過観察が必要です。
こうした「再発のしやすさ」が、「一生治らない」と表現される大きな理由のひとつです。
完治が難しいとされる医学的背景
双極性障害は脳の神経伝達物質の働きや遺伝的要因が関係しているとされ、完全に元の状態に戻す「完治」は現代医学でも困難です。
そのため「完全に治す」というよりも、症状をコントロールして安定を保つことが治療の目的となります。
医学的にも「慢性的に経過する病気」と位置づけられているため、「治らない」と言われやすいのです。
「一生付き合う病気」という表現の真意
「一生治らない」という言葉の本当の意味は、絶望を意味するのではなく、再発リスクがあるため長期的に付き合っていく必要がある病気ということです。
実際には、治療やセルフケアで長期間症状が出ない「寛解状態」を維持できる人も多くいます。
つまり「一生治らない」ではなく、「一生コントロールしながら安定した生活を送れる病気」と捉えるのが正しい理解です。
この視点を持つことで、過度に悲観することなく前向きに治療へ取り組めるようになります。
双極性障害は本当に治らないのか？
双極性障害は「一生治らない」と言われることがありますが、それは正確な表現ではありません。
現代医学では完全に元の状態に戻す「完治」は難しいとされていますが、寛解（症状が安定し、生活に支障なく過ごせる状態）を長期間維持することは十分可能です。
多くの人が治療やセルフケアを続けながら、仕事や家庭生活を安定して送っています。
ここでは「治らない」という言葉の本当の意味を理解するために、完治と寛解の違い、治療で安定できるケース、そしてコントロール可能な病気としての側面を解説します。
- 完治と寛解の違いを理解する
- 適切な治療で安定して暮らせるケース
- 治らないのではなく「コントロール可能な病気」
正しい理解を持つことで、必要以上に悲観せず前向きに治療へ取り組むことができます。
完治と寛解の違いを理解する
「完治」とは病気が完全に治り、再発の心配がない状態を指します。
一方、双極性障害における「寛解」は、症状がほとんど出ず、社会生活や日常生活に支障がない状態が続いていることを意味します。
つまり、完治は難しくても、寛解を維持することで実生活においては「治った」と同じように過ごすことができるのです。
適切な治療で安定して暮らせるケース
双極性障害は薬物療法（気分安定薬や抗精神病薬）と心理社会的療法（認知行動療法・家族療法など）を組み合わせることで、症状をコントロールできます。
さらに、睡眠・食事・運動などの生活習慣を整えることも安定に欠かせません。
これらを続けることで、数年単位で安定した生活を送っている人も多く、治らないのではなく「安定を維持できる」病気といえます。
治らないのではなく「コントロール可能な病気」
双極性障害は確かに再発リスクを伴う慢性疾患ですが、治らない＝絶望という意味ではありません。
適切な治療とセルフケアを続ければ、コントロール可能な病気として長期的に安定した生活を送ることができます。
「一生治らない」という言葉に振り回されるのではなく、「一生上手に付き合う病気」と理解することが大切です。
この視点を持つことで、前向きに治療へ取り組む力が生まれます。
治療の柱｜双極性障害と向き合う方法
双極性障害は「一生治らない」と言われがちですが、実際には治療と生活習慣の工夫で安定して暮らすことが可能な病気です。
大切なのは、症状を抑えこむことだけでなく、再発を防ぎ、寛解を維持するための継続的な取り組みです。
そのための治療の柱は大きく3つに分けられます。薬による治療、心理社会的なサポート、そして生活習慣の安定です。
- 薬物療法（気分安定薬・抗精神病薬など）
- 心理社会的療法（認知行動療法・家族療法）
- 生活習慣の安定（睡眠・食事・運動）
これらをバランスよく取り入れることで、双極性障害と前向きに向き合うことができます。
薬物療法（気分安定薬・抗精神病薬など）
双極性障害の治療で中心となるのは薬物療法です。
代表的なものに気分安定薬（リチウム、バルプロ酸など）や抗精神病薬があり、躁状態や鬱状態の波を抑え、再発を予防する効果があります。
薬の効果を安定して得るためには、自己判断での中断は避け、必ず医師の指示に従って継続することが重要です。
服薬を続けることで、長期間安定した生活を送る人も少なくありません。
心理社会的療法（認知行動療法・家族療法）
薬物療法に加えて有効とされるのが心理社会的療法です。
認知行動療法（CBT）では、物事の受け止め方や考え方のクセを修正し、ストレスを軽減する方法を学びます。
また、家族療法では、家族が病気への理解を深め、再発の兆候に早めに気づきサポートできるようになります。
周囲の理解と支援があることで、本人も安心して治療に専念できます。
生活習慣の安定（睡眠・食事・運動）
双極性障害では生活習慣の乱れが再発の大きなリスク要因となります。
特に睡眠リズムは重要で、夜更かしや徹夜は躁状態や鬱状態を引き起こすきっかけになります。
さらに、栄養バランスの取れた食事や適度な運動は、脳と心の安定に効果的です。
日々のセルフケアを継続することが、再発予防と長期的な安定につながります。
再発を防ぐためにできること
双極性障害は再発しやすい病気ですが、日常生活での工夫や周囲の理解によって再発リスクを大きく下げることが可能です。
特に重要なのは、睡眠リズムの安定・ストレス管理・セルフモニタリング、そして家族や職場のサポートです。
これらを意識的に取り入れることで、寛解状態を維持しやすくなり、安定した生活を続けることができます。
- 睡眠リズムを整える重要性
- ストレスマネジメントとセルフモニタリング
- 家族や職場の理解とサポート
以下でそれぞれのポイントを詳しく解説します。
睡眠リズムを整える重要性
睡眠の乱れは再発の最大の要因とされています。徹夜や不規則な生活は、躁状態や鬱状態への切り替わりを誘発しやすくなります。
そのため、毎日同じ時間に寝起きする規則正しい睡眠習慣がとても大切です。
夜更かしを避け、休日もできるだけ平日と同じリズムで過ごすことが再発予防につながります。
睡眠を最優先に考えることが、双極性障害の安定管理の第一歩です。
ストレスマネジメントとセルフモニタリング
強いストレスは症状の再発や悪化につながります。そのため、ストレスマネジメントを取り入れることが大切です。
呼吸法・マインドフルネス・軽い運動などを習慣にすることで、気持ちを落ち着ける効果が期待できます。
また、セルフモニタリングとして気分日記やアプリを活用し、自分の気分の変化を客観的に記録すると、早めに兆候に気づけます。
「最近眠れない」「気分が高ぶっている」と感じたときにすぐ対応できるようになることが、再発予防に直結します。
家族や職場の理解とサポート
本人だけでなく、家族や職場の理解と協力も再発予防には欠かせません。
家族が症状の変化に気づき、早めに医師に相談できるようにすることは大きな支えになります。
また、職場でも業務量の調整・柔軟な勤務形態などが整えば、安心して働き続けることができます。
周囲の理解があることで、本人は「一人で抱え込まなくてよい」と感じられ、安心感から安定した生活を送りやすくなります。
「一生治らない」という言葉に振り回されないために
双極性障害は「一生治らない」と言われることが多く、その言葉だけを受け止めてしまうと大きな不安や絶望感につながります。
しかし、実際には完治は難しくても寛解を維持して安定した生活を送ることは可能です。
大切なのは、ネガティブな情報に過度に影響されるのではなく、正しい知識を得て前向きに病気と付き合う視点を持つことです。
- ネガティブ情報が与える心理的影響
- 正しい情報源から知識を得ることの大切さ
- 前向きに病気と付き合うための考え方
ここでは、心を守るために意識したいポイントを解説します。
ネガティブ情報が与える心理的影響
「一生治らない」という言葉をそのまま信じてしまうと、希望を失い治療意欲が下がる恐れがあります。
実際には多くの人が治療を続けながら安定した生活を送っているにもかかわらず、ネガティブな情報だけが強調されることで「努力しても無駄」と感じてしまうのです。
こうした心理的影響は回復の妨げになるため、情報の受け取り方には注意が必要です。
正しい情報源から知識を得ることの大切さ
インターネットやSNSには、根拠のない体験談や極端な意見があふれています。
しかし双極性障害について正しく理解するためには、専門医・学会・公的機関など信頼できる情報源を参考にすることが重要です。
正しい知識を持つことで、不安を減らし現実的な治療方針を立てやすくなります。
前向きに病気と付き合うための考え方
双極性障害は「一生治らない病気」ではなく、一生コントロールしながら付き合う病気と考えるのが適切です。
薬物療法や心理療法、生活習慣の工夫によって長期間安定して過ごすことは可能であり、その間に仕事や趣味、家族との生活を充実させることもできます。
「治す」ことだけを目標にするのではなく、「自分らしく生きるために安定を保つ」ことを意識することで、前向きな姿勢で病気と向き合うことができます。
家族や周囲ができるサポート
双極性障害は長期的に向き合う必要がある病気だからこそ、本人だけでなく家族や周囲のサポートがとても重要です。
特に再発しやすい特徴を持つため、本人が自覚しにくい変化に周囲が気づき、早めに対応できる体制があると安心です。
また、支える側が無理をしてしまうと共倒れにつながる恐れがあるため、家族自身のセルフケアも欠かせません。
- 症状を否定せず受け止める
- 再発兆候に気づき早めに対応する
- 支える側のセルフケアも重要
ここでは、家族や周囲が実践できる具体的なサポートのポイントを紹介します。
症状を否定せず受け止める
本人が「気分が落ち込む」「イライラが抑えられない」と訴えたときに、否定や叱責ではなく共感して受け止めることが大切です。
「気の持ちようだよ」「頑張れば大丈夫」と励ますことは、かえって本人を追い詰めることにつながります。
安心して気持ちを話せる環境を作ることが、症状の安定に直結します。
再発兆候に気づき早めに対応する
双極性障害は再発の兆候（睡眠の乱れ・活動量の増加・気分の極端な変化）が見られることがあります。
家族や周囲がそのサインに気づき、早めに医師へ相談することで再発を防ぐことが可能です。
気分日記やセルフモニタリングを一緒に確認するなど、日常の中で小さな変化を見逃さない工夫が有効です。
支える側のセルフケアも重要
家族や周囲が支え続ける中で、ストレスや疲労が蓄積してしまうことは少なくありません。
支える側が限界を迎えてしまうと、本人をサポートできなくなるだけでなく共倒れのリスクも高まります。
そのため、家族自身も趣味や休養の時間を確保し、必要ならカウンセリングを利用することが大切です。
「支える人の健康を守ること」が、結果的に本人を長く支える力につながります。
よくある質問（FAQ）
Q1. 双極性障害は一生薬を飲み続ける必要がありますか？
双極性障害は再発を繰り返しやすい病気のため、長期間の服薬管理が必要です。
ただし「一生絶対に薬を飲まなければならない」というわけではなく、症状の安定や医師の判断によって減薬や中止が検討されることもあります。
重要なのは自己判断で薬をやめないことで、服薬調整は必ず医師と相談しながら進めましょう。
Q2. 完全に治った人はいる？
「完治」という意味では難しいとされますが、長期間症状が出ない寛解状態を保ちながら生活している人は多くいます。
治ったように安定して暮らせるケースも珍しくなく、仕事や家庭を両立しながら社会で活躍している方もいます。
つまり「完全に治る」よりも「安定して生活できる」ことを目指すのが現実的です。
Q3. 双極性障害と寿命は関係ある？
双極性障害そのものが寿命を直接縮めるわけではありません。
ただし自殺リスクや生活習慣病の合併が高まる傾向があるため、適切な治療と生活習慣の管理が重要です。
治療やサポートを継続することで、健康寿命を保ちながら安心して生活することが可能です。
Q4. 寛解を維持するコツは？
寛解を維持するためには、規則正しい生活リズム・十分な睡眠・ストレスマネジメントが基本です。
さらに、気分日記やアプリで自分の変化を記録するセルフモニタリングも有効です。
家族や医師と情報を共有しながら、早めに兆候へ対応することが再発予防につながります。
Q5. 家族ができる最も大切なサポートは？
家族ができる最大のサポートは、症状を否定せず受け止めることです。
「気の持ちよう」などと突き放すのではなく、安心して話せる環境を作ることが本人にとって大きな支えになります。
さらに、再発兆候を一緒にチェックし、必要に応じて医師に早めに相談する姿勢も重要です。
「一生治らない」ではなく「一生付き合える病気」
双極性障害は完治が難しい病気ですが、「一生治らない＝絶望」ではありません。
適切な治療とセルフケアを続ければ、寛解状態を維持しながら安定した生活を送ることは十分可能です。
大切なのは「治す」ことだけにこだわるのではなく、病気と上手に付き合いながら自分らしく生きることです。
「一生治らない」という言葉に振り回されず、「一生付き合える病気」と理解することが、前向きな人生を歩むための第一歩となります。
心の病気は放置すると重症化する恐れがあるため、早期の治療をお求めの方は当院までご相談ください。
