「体がだるくて動けない」「何もやる気が起きない」──そんな状態が続いているとき、単なる疲れではなくうつ病のサインである可能性があります。
うつ病では、脳や自律神経の働きが乱れることで強い倦怠感や気力の低下が起こり、家事や仕事が手につかないほど動けない状態に陥ることがあります。
しかし、早めに原因を理解し、適切なセルフケアや周囲のサポートを取り入れることで、悪化を防ぐことができます。
本記事では、うつ病で「だるい・動けない」と感じる理由や具体的な対処法、家族や周囲ができるサポート、さらに専門家に相談すべきタイミングまで分かりやすく解説します。
「怠けているだけかも」と自分を責めず、心と体からのSOSに気づくための参考にしてください。
心の病気は放置すると重症化する恐れがあるため、早期の治療をお求めの方は当院までご相談ください。
うつ病で「だるい・動けない」と感じる理由
うつ病の症状の中でも特に多くの人が悩むのが強い倦怠感や「体が重くて動けない」という感覚です。
これは単なる疲労や怠けではなく、脳や自律神経の働きが乱れることによって引き起こされるものです。
さらに、心理的な要因や身体的な不調も重なり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
ここでは、うつ病で「だるい・動けない」と感じる代表的な原因を4つの観点から解説します。
- 脳や自律神経の不調による強い倦怠感
- 気力が湧かない心理的背景
- 朝起きられない・布団から出られない仕組み
- 身体症状(頭痛・食欲不振・胃腸トラブル)との関係
原因を理解することで、自分の状態を責めるのではなく、適切な対処や治療につなげやすくなります。
脳や自律神経の不調による強い倦怠感
うつ病では、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの働きが低下し、心身のエネルギーが不足した状態になります。
また、自律神経のバランスが乱れることで、体が常に緊張状態となり、十分に休んでも疲れが取れない感覚が続きます。
この結果、「体が鉛のように重い」「一日中だるい」といった強い倦怠感が現れるのです。
本人の努力や根性では改善できないため、医学的なサポートが必要になるケースも少なくありません。
気力が湧かない心理的背景
うつ病になると「やらなければならないのに動けない」という状態が頻繁に起こります。
これは、脳の働きが低下することで意欲や達成感を感じにくくなるためです。
また「自分はダメだ」「何をしても無駄だ」といった否定的な思考が強まり、ますます行動に移せなくなります。
こうした心理的背景によって気力が湧かず、結果として生活のあらゆる場面で動けなくなってしまうのです。
朝起きられない・布団から出られない仕組み
うつ病の人がよく訴えるのが「朝起きられない」「布団から出られない」という症状です。
これは睡眠リズムの乱れや、朝方に気分が最も落ち込む「日内変動」と呼ばれる特徴が関係しています。
夜眠れず、朝になっても疲労が取れないため、体が重く感じて動き出せなくなります。
また、布団から出られないことで「今日もできなかった」と自己否定感が強まり、さらに症状を悪化させる悪循環に陥ることもあります。
身体症状(頭痛・食欲不振・胃腸トラブル)との関係
うつ病では心の不調だけでなく、身体症状として現れるケースも多くあります。
代表的なのが頭痛、食欲不振、胃腸のトラブル、肩こり、動悸などです。
これらは自律神経の乱れによって引き起こされ、検査をしても異常が見つからないことが少なくありません。
しかし、本人にとっては強いだるさや不快感となり、動けない原因になります。
心身は密接に関係しているため、体の不調を軽視せず、心のサインとして受け止めることが大切です。
うつ病による「だるさ・動けなさ」のサイン
うつ病の特徴のひとつに「だるい」「動けない」という症状があります。
これは単なる疲労とは異なり、休んでも改善しない強い倦怠感として現れます。
こうした症状が続くと、日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼすことになります。
ここでは、うつ病による「だるさ・動けなさ」に見られる代表的なサインを紹介します。
- 日常生活に支障が出るほどの疲労感
- 家事や仕事が手につかない
- 好きなことにも興味が持てない
- 横になってばかりいる・外出できない
- 「怠けている」と誤解されやすい特徴
これらのサインを早めに理解し、本人も周囲も適切に対応することが、悪化を防ぐために重要です。
日常生活に支障が出るほどの疲労感
うつ病では、強い疲労感が日常生活に影響するレベルで現れます。
朝起きても体が重く、出かける準備ができない、食事の支度ができないなど、生活の基本動作が難しくなることがあります。
単なる疲れであれば休養で回復しますが、うつ病の疲労感は休んでも改善しないのが特徴です。
このため「なぜこんなに動けないのか」と自己否定に陥ることもあります。
日常生活に支障が出るほどの疲労感は、うつ病の重要なサインのひとつです。
家事や仕事が手につかない
うつ病になると集中力や意欲が低下し、家事や仕事に手をつけられなくなります。
食器を片付ける、掃除をする、書類をまとめるなどの簡単な作業でさえ大きな負担に感じるのです。
この状態が続くと「できない自分」に落ち込み、ますます気持ちが沈んでしまいます。
周囲からは「怠けている」と誤解されやすいですが、実際には脳や心のエネルギーが不足している状態です。
小さな行動から始め、少しずつできることを増やしていく工夫が必要です。
好きなことにも興味が持てない
以前は楽しいと感じていた趣味や娯楽にも関心がなくなるのは、うつ病の代表的な症状です。
音楽を聴いても心が動かない、好きな映画や本に手が伸びないなど、喜びや達成感を感じにくくなります。
この状態は「興味や喜びの喪失」と呼ばれ、診断基準のひとつにも挙げられています。
本人は「何も楽しめない自分」を責めやすくなりますが、これは病気の影響であり怠けではありません。
興味を取り戻すには時間がかかるため、焦らず小さな喜びを積み重ねることが大切です。
横になってばかりいる・外出できない
強い倦怠感や無気力から、横になって過ごす時間が増えるのも特徴です。
一日中布団やソファから出られず、外出が困難になることもあります。
周囲から見ると「怠けている」と思われがちですが、本人にとっては体が重く動けない状態です。
また、外出の準備や人と会うこと自体が大きなストレスになり、引きこもりがちになります。
このサインを放置すると生活リズムがさらに崩れるため、環境を整え少しずつ体を動かす工夫が必要です。
「怠けている」と誤解されやすい特徴
うつ病による「だるさ・動けなさ」は、周囲から怠けていると誤解されやすいのが特徴です。
本人は必死に頑張ろうとしても体が動かず、無理に行動しようとするとさらに疲れてしまいます。
その一方で、見た目には病気だと分かりにくいため「気合いが足りない」と言われてしまうのです。
こうした誤解は本人を追い詰め、症状を悪化させる要因となります。
「動けないのは病気のせい」と正しく理解し、周囲が寄り添う姿勢が求められます。
自分でできる対処法(セルフケア)
うつ病のなりかけや「だるい・動けない」と感じるときには、無理に頑張ろうとするよりも、小さなセルフケアを積み重ねることが大切です。
完璧に取り組む必要はなく、自分にできる範囲の工夫を生活に取り入れるだけでも回復につながります。
ここでは、日常に取り入れやすい具体的なセルフケアの方法を紹介します。
- 「小さな行動」から始める(着替える・洗顔など)
- 生活リズムを少しずつ整える
- 完璧を目指さず「できたこと」を認める
- 軽い運動や散歩で体をほぐす
- 心身を休める「休養日」を意識的に設ける
- 食事や水分補給を意識して体力を回復させる
- 音楽・瞑想・呼吸法などリラックス法を試す
これらは小さな工夫ですが、積み重ねることで心身のバランスを取り戻す助けとなります。
「小さな行動」から始める(着替える・洗顔など)
動けないときに大切なのは、小さな行動から始めることです。
例えば、布団から出て顔を洗う、パジャマから普段着に着替えるといった簡単な行動でも十分です。
「これくらいで意味があるのか」と思うかもしれませんが、小さな行動が心にリズムを生み出します。
一つの行動ができると「今日もできた」という自己肯定感につながり、次の行動へのきっかけになります。
無理をせず「できることを少しずつ」で大丈夫です。
生活リズムを少しずつ整える
生活リズムの乱れは、心身に大きな影響を与えます。
朝起きられず昼夜逆転してしまうこともありますが、完全に整えようとすると負担になります。
まずは「いつもより30分早く起きる」「朝にカーテンを開けて日光を浴びる」といった小さな工夫から始めましょう。
生活リズムが安定することで自律神経も整いやすくなり、気分の落ち込みや疲労感が軽減されやすくなります。
完璧を目指さず「できたこと」を認める
うつ病のときは「これもできなかった」とできない部分に目を向けがちです。
しかし回復には「小さなできたこと」を認める姿勢が大切です。
例えば「今日は洗濯物を畳めた」「外に出て5分歩けた」など、どんなに小さなことでも自分を褒めましょう。
完璧を目指さず「できたこと」に意識を向けることで、自己否定感が和らぎます。
軽い運動や散歩で体をほぐす
体を動かすことは心にとっても大きな効果があります。
本格的な運動をする必要はなく、軽い散歩やストレッチで十分です。
体を動かすと脳内でセロトニンが分泌され、気分の改善につながります。
外に出るのが難しいときは、家の中で手足を伸ばすだけでも効果的です。
無理のない範囲で少しずつ取り入れていくことが大切です。
心身を休める「休養日」を意識的に設ける
「だるい」と感じるときは、心と体からのSOSサインです。
無理をして動こうとすると、かえって疲労や落ち込みが悪化してしまいます。
そのため「今日は休む日」と割り切って、意識的に休養日を作ることも必要です。
休むことを「怠け」だと捉えず、回復のための大切な時間として考えましょう。
食事や水分補給を意識して体力を回復させる
うつ病では食欲が落ち、食事が不規則になることがあります。
しかし栄養や水分の不足は心身の不調を悪化させます。
食欲がないときでも、スープや果物、ヨーグルトなど簡単に食べられるものを意識して摂ることが大切です。
また、水分をしっかり補給することで体の回復が促されます。
食事と水分補給は、心のエネルギーを取り戻す基本となります。
音楽・瞑想・呼吸法などリラックス法を試す
心の緊張を和らげるには、リラックス法を取り入れることも有効です。
好きな音楽を聴く、深呼吸や瞑想をする、アロマを使ってみるなど、自分に合った方法を探してみましょう。
呼吸を整えることで自律神経が安定し、心が落ち着きやすくなります。
短時間でも毎日の習慣にすると、気分の安定につながります。
「心を休める時間」を意識的に持つことが、回復の一歩となります。
家族や周囲ができるサポート
うつ病で「だるい・動けない」と感じている人にとって、家族や周囲の理解とサポートは大きな支えになります。
しかし、接し方を間違えると、本人を追い詰めてしまうことも少なくありません。
大切なのは、否定や強制をせずに寄り添い、安心できる環境を整えることです。
ここでは、家族や周囲ができる具体的なサポートの方法を5つ紹介します。
- 「怠けている」と言わず理解を示す
- できないことを手伝いサポートを分担する
- 受診や相談につなげる声かけ
- 一緒に生活リズムを整える工夫
- 支える側も無理をせずセルフケアを大切にする
本人と家族が協力して取り組むことで、回復への道が少しずつ開けていきます。
「怠けている」と言わず理解を示す
うつ病によるだるさや無気力は、本人の努力不足ではなく病気による症状です。
しかし、見た目では分かりにくいため「怠けているだけ」と誤解されやすい特徴があります。
家族や周囲がそのように言葉をかけてしまうと、本人は強い罪悪感や自己否定感に陥り、症状がさらに悪化する可能性があります。
大切なのは「無理しなくていいよ」「疲れているんだね」と理解を示す声かけです。
否定ではなく共感の言葉をかけることが、本人に安心感を与え、回復への第一歩となります。
できないことを手伝いサポートを分担する
うつ病の人は、普段なら簡単にできる家事や日常の作業が大きな負担になります。
例えば、料理や掃除、買い物などのタスクが重荷となり、何もできずに落ち込んでしまうことがあります。
そんなときは「やらなきゃダメ」と叱るのではなく、家族ができる範囲で手伝ったり、分担することが大切です。
「今日は洗濯はやっておくね」「買い物は一緒に行こう」などのサポートが、本人の気持ちを大きく軽くします。
周囲の助けを得ることで「全部自分でやらなければ」というプレッシャーから解放され、少しずつ心が安定していきます。
受診や相談につなげる声かけ
症状が長引いたり生活に支障が出ているときは、医療機関や相談窓口につなげることが必要です。
ただし「病院に行きなさい」と強く言うと、本人は抵抗を感じることが多いです。
そのため「一度専門の人に話を聞いてもらうと安心できるかもしれないね」「一緒に行ってみようか」といった優しい声かけが効果的です。
付き添いを申し出ることで、本人も不安を和らげながら受診につなげやすくなります。
強制ではなく、寄り添いながら背中を押す姿勢が大切です。
一緒に生活リズムを整える工夫
うつ病では生活リズムの乱れが症状を悪化させる要因になります。
本人だけで整えようとすると難しいため、家族が一緒に取り組むことが有効です。
例えば「朝一緒に朝食をとる」「夕方に一緒に散歩する」など、ささやかな習慣から始めると無理なく続けられます。
強制するのではなく「一緒にやってみよう」と提案することで、本人も安心して行動に移せます。
周囲が寄り添うことで、生活リズムを取り戻しやすくなります。
支える側も無理をせずセルフケアを大切にする
家族や周囲の人が支えることに疲れてしまうケースも少なくありません。
支える側が心身を消耗すると、結果的に本人へのサポートも難しくなります。
そのため「自分も休む時間を作る」「信頼できる人に相談する」といったセルフケアを意識することが大切です。
サポートを分担したり、支援機関に頼ることも有効です。
「支える人が元気でいること」が、長期的に本人を助けるための最良のサポートになります。
専門家に相談すべきタイミング
「だるい」「動けない」といった状態が長く続くときには、専門家に相談することが重要です。
うつ病は早期に対応するほど回復が早まり、生活への影響も少なくて済みます。
一方で「まだ大丈夫」「気のせいかもしれない」と放置してしまうと、症状が悪化して日常生活に深刻な支障を与えることもあります。
ここでは、専門家に相談すべき代表的なタイミングを4つ紹介します。
- だるさや動けなさが2週間以上続く
- 仕事や学業、家庭生活に大きな支障がある
- 「消えたい」と思うなど強い不安がある
- セルフケアだけでは改善が見られないとき
当てはまる場合は「様子を見る」ではなく、できるだけ早めに医療機関や相談窓口を利用しましょう。
だるさや動けなさが2週間以上続く
誰にでも疲れて動けない日や気分が落ち込む日があります。
しかし、その状態が2週間以上続く場合は、うつ病のサインである可能性が高まります。
特に、休んでも改善しない、体が鉛のように重い、朝起きられないといった症状が長引くのは注意が必要です。
この段階で受診すれば比較的軽度のうちに回復できる可能性があります。
「我慢すれば治る」と思わず、持続する症状には専門的なサポートを検討しましょう。
仕事や学業、家庭生活に大きな支障がある
生活への支障は、専門家に相談すべき大きなサインです。
例えば、仕事でミスが増える、欠勤や遅刻が増える、勉強に集中できない、家事や育児がこなせないなどの状況です。
本人は「怠けている」と感じてさらに落ち込みやすく、悪循環に陥ります。
こうした支障は早めに医師やカウンセラーに相談することで改善へのきっかけが見つかります。
生活が立ち行かなくなる前に行動することが大切です。
「消えたい」と思うなど強い不安がある
「いなくなりたい」「消えてしまいたい」といった希死念慮は、うつ病が進行している深刻なサインです。
本人は言葉にしにくく、周囲に気づかれないこともあります。
しかし放置すると、自傷行為や自殺企図につながる危険が高まります。
このような気持ちがある場合は、すぐに専門家へ相談することが不可欠です。
緊急の際は、医療機関や24時間対応の相談窓口を利用することも検討しましょう。
セルフケアだけでは改善が見られないとき
生活リズムを整えたり、休養を取ったりといったセルフケアで改善が見られない場合は、専門的な治療が必要です。
うつ病は脳内の神経伝達物質の乱れとも関係しているため、自分の努力だけで回復するのは難しいケースがあります。
「気持ちの持ちよう」と考えて無理を続けると、かえって悪化する危険があります。
セルフケアで効果が出ないと感じたら、早めに医療機関に相談することが、回復への近道となります。
専門家の助けを得ることは、弱さではなく前向きな選択です。
医療機関・相談窓口の選び方
「だるい」「動けない」といった症状が続くときには、医療機関や相談窓口を利用することが回復への近道になります。
とはいえ「どこに行けばいいのか」「誰に相談すればよいのか」と迷う人も少なくありません。
医師による診察や心理療法、カウンセリング、さらに電話やSNSで気軽に相談できる窓口など、選択肢は多様です。
最近ではオンライン診療も普及しており、外出が難しい人でも安心して利用できるようになっています。
ここでは代表的な相談先とその特徴を紹介します。
- 精神科・心療内科での治療(薬物療法・心理療法)
- カウンセリングや認知行動療法の活用
- 電話相談・SNS相談など気軽に利用できる支援先
- オンライン診療を活用するメリット
自分に合った相談先を見つけることで、安心して治療や支援を受けることができます。
精神科・心療内科での治療(薬物療法・心理療法)
精神科や心療内科では、医師が症状を詳しく聞き取り、必要に応じて診断や治療を行います。
薬物療法では、脳内の神経伝達物質のバランスを整える抗うつ薬や抗不安薬が処方されることがあります。
また、薬を使わずに心理療法を中心とした治療が選ばれる場合もあり、症状や体質に合わせた対応が可能です。
「ただの疲れかも」と思っても、医師に相談することで適切な診断を受けられ、安心感を得られる人も少なくありません。
早期に受診することで重症化を防ぎ、回復を早めることができます。
カウンセリングや認知行動療法の活用
カウンセリングでは、専門の心理士が丁寧に話を聞き、本人が抱える思いやストレスを整理する手助けをしてくれます。
安心して気持ちを表現できる場を持つことで、心が軽くなりやすいのが特徴です。
また、認知行動療法(CBT)は、ものごとの捉え方や思考の癖に働きかけ、前向きな行動を取り戻すことを目指す心理療法です。
「どうせ自分はダメだ」といった思考を修正し、少しずつ行動を広げていくことで、症状の改善が期待できます。
薬だけに頼らず、心のケアを重視したい人にとって有効な方法です。
電話相談・SNS相談など気軽に利用できる支援先
「いきなり病院はハードルが高い」と感じる場合は、電話相談やSNS相談を活用するのもおすすめです。
厚生労働省や自治体、民間団体などが運営する相談窓口では、専門の相談員が匿名で話を聞いてくれます。
電話で声を聞いてもらうだけで安心できる人もいれば、文字で気持ちを伝える方が楽だという人もいます。
誰かに話すことで「一人ではない」と実感でき、心の負担が軽くなります。
こうした相談窓口は24時間対応している場合も多く、危機的な状況にも対応できる心強い支援先です。
オンライン診療を活用するメリット
近年はオンライン診療が普及し、外出が難しい人でも専門家に相談しやすくなっています。
自宅にいながらスマホやパソコンで診察を受けられるため、通院へのハードルが下がります。
「外に出るのがつらい」「人に会うのが不安」といった状況でも、安心して利用できるのが大きなメリットです。
また、定期的な経過観察や薬の処方にも対応できる場合があり、継続的な治療にも役立ちます。
選択肢のひとつとして知っておくことで、必要なときにすぐに利用できる安心感につながります。
再発や悪化を防ぐための工夫
うつ病は一度回復しても再発しやすい病気と言われています。
そのため、良くなったあとも予防を意識して生活することが大切です。
症状の再燃を防ぐためには、自分の心身の状態を把握し、生活習慣を整え、支えてくれる人とのつながりを持つことが欠かせません。
また、ストレスに適切に対処する方法を学んでおくことで、再発リスクを下げることができます。
ここでは、再発や悪化を防ぐための代表的な工夫を紹介します。
- セルフモニタリングで気分を記録する
- 規則正しい生活習慣を維持する
- 支えてくれる人とつながりを持つ
- ストレスマネジメントを学ぶ
これらを習慣にすることで、再発を予防し、安定した生活を送りやすくなります。
セルフモニタリングで気分を記録する
セルフモニタリングとは、自分の気分や体調を日々記録していく方法です。
「今日は疲れやすかった」「気分が落ち込んだ」などを簡単に書き留めるだけでも構いません。
記録することで、自分の調子の変化やストレスの原因に気づきやすくなります。
また、医師やカウンセラーに相談するときに具体的な記録があると、より適切なアドバイスや治療を受けやすくなります。
自分を客観的に見る習慣が、再発予防につながります。
規則正しい生活習慣を維持する
生活習慣の乱れは、うつ病の再発リスクを高める要因のひとつです。
特に睡眠・食事・運動は心の健康に大きく影響します。
毎日同じ時間に起きる、朝日を浴びる、栄養バランスの良い食事を取るなど、小さな工夫を積み重ねましょう。
また、軽い運動や散歩を習慣化することで、自律神経が整いやすくなり、気分も安定しやすくなります。
「完璧にやらなければ」と思わず、できる範囲で続けることが大切です。
支えてくれる人とつながりを持つ
うつ病は孤立すると悪化しやすいため、支えてくれる人とのつながりを持つことが重要です。
家族や友人に気持ちを話すことや、同じ悩みを抱える人が集まるサポートグループに参加するのも有効です。
「一人ではない」と感じるだけで安心感が増し、再発の予防につながります。
無理に多くの人と関わる必要はありません。
信頼できる人との少数のつながりでも、心の安定に大きな効果があります。
ストレスマネジメントを学ぶ
再発を防ぐためには、日常のストレスを適切に管理することも欠かせません。
例えば、リラックス法(深呼吸・瞑想・ヨガ)を取り入れる、趣味や休養の時間を確保するなどの工夫があります。
また、ストレスを感じたときに「すぐに書き出して整理する」習慣を持つことも効果的です。
自分に合ったストレス対処法をいくつか持っておくと、気分が落ち込んだときに立て直しやすくなります。
ストレスに振り回されずコントロールする力をつけることで、再発を予防できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. うつ病の「だるい・動けない」ときは怠けているだけ?
うつ病で感じるだるさや動けなさは、決して怠けや甘えではありません。
脳や自律神経の働きが乱れているため、本人の努力や根性ではどうにもならない状態です。
外見からは分かりにくいため周囲から「怠けている」と誤解されやすいのですが、これは病気による症状です。
本人にとっては大きな苦痛であり、責められることでさらに症状が悪化することもあります。
「怠けているのではなく病気のサイン」と理解することが回復を支える大切な視点です。
Q2. 朝起きられないのはうつ病の典型症状ですか?
うつ病の人に多く見られるのが、朝起きられないという症状です。
これは「日内変動」と呼ばれる特徴で、朝に気分や体調が最も悪化することが知られています。
夜眠れず疲労が取れないことも関係しており、布団から出るのが困難になります。
単なる夜更かしや生活リズムの乱れとは異なり、体と心が動かないのは病気の影響です。
このサインが続く場合は、医療機関への相談を検討することが大切です。
Q3. 家事や仕事ができないときはどうすればいい?
うつ病の症状で家事や仕事に手がつかないことは珍しくありません。
その場合は「できない自分を責めない」ことが大切です。
一度に完璧を目指すのではなく、小さな作業を分けて行ったり、優先順位をつけたりすると負担が軽くなります。
また、家族や同僚に協力をお願いすることも必要です。
責任感が強い人ほど無理をしがちですが、休養も治療の一部と考えてよいのです。
Q4. 自力で改善できる人もいますか?
軽度のうつ病であれば、セルフケアや生活習慣の改善によって回復する人もいます。
例えば、睡眠・食事・運動を整える、ストレスを減らす工夫をする、信頼できる人に気持ちを話すなどです。
しかし、誰もが自力で改善できるわけではなく、むしろ無理をして悪化する人も少なくありません。
改善が見られない場合は早めに専門家に相談することが、最も安全で確実な方法です。
Q5. 薬を飲めば「だるさ」はすぐ改善しますか?
薬物療法は効果的な治療法のひとつですが、飲めばすぐに症状が改善するわけではありません。
抗うつ薬や抗不安薬は効果が出るまで数週間かかることが多く、焦らず継続することが必要です。
また、薬の種類や量は人によって合う・合わないがあるため、医師と相談しながら調整していくことになります。
薬だけに頼るのではなく、生活習慣の改善や心理療法と組み合わせることでより効果が期待できます。
Q6. 適応障害や慢性疲労症候群との違いは?
適応障害は特定のストレス要因に反応して心身に不調が出る病気であり、ストレスの原因が解決されると症状が改善しやすい特徴があります。
一方、うつ病は原因がはっきりしないことも多く、ストレスがなくなっても症状が続くのが特徴です。
また、慢性疲労症候群は強い疲労感が6か月以上続く病気で、感染症や免疫異常などが背景にあるとされています。
いずれも症状が似ていますが、原因や治療法が異なるため、正しい診断を受けることが重要です。
Q7. 学生や子どもでも「だるい・動けない」はうつ病のサイン?
うつ病は大人だけでなく、学生や子どもにも起こり得る病気です。
「学校に行きたくない」「朝起きられない」「遊びに興味がなくなった」といった様子が続く場合は注意が必要です。
思春期は心身が不安定になりやすく、学業や人間関係のストレスも影響します。
本人が「怠けている」と誤解されやすいため、周囲の大人が正しい知識を持ち、適切にサポートすることが大切です。
気になる場合は、早めに医師やスクールカウンセラーに相談しましょう。
「だるい・動けない」は心のSOS、無理せず対処と相談を
「だるい」「動けない」という症状は、心と体が発しているSOSです。
決して怠けではなく、うつ病のサインである可能性があります。
無理に頑張ろうとせず、セルフケアや周囲のサポートを取り入れながら、必要に応じて専門家に相談することが大切です。
早めに対処することで、症状の悪化や再発を防ぎ、安心した生活を取り戻すことができます。
心の病気は放置すると重症化する恐れがあるため、早期の治療をお求めの方は当院までご相談ください。