失業保険がもらえないケースはある?申請できる人とできない人の受給条件・期間・対象者を解説

退職後の生活を支える大切な制度である失業保険(雇用保険の基本手当)。しかし、誰もが必ずもらえるわけではありません。「自分は対象になるのだろうか」「手続きをしたのにもらえないと言われたらどうしよう」と不安に思う方も多いでしょう。

失業保険がもらえないケースには、雇用保険の加入期間が足りない、すぐに働く意思や能力がないと判断されるなど、いくつかの明確な理由が存在します。この記事では、失業保険がもらえない代表的な10のケースを具体的に解説し、自分が当てはまるかどうかの確認ポイントや、もしもらえなかった場合の対処法まで詳しくご紹介します。退職後の不安を解消し、次のステップへ進むための知識として、ぜひ最後までお読みください。

失業保険がもらえない代表的な10のケース

失業保険の受給には一定の条件があり、それを満たしていない場合は支給されません。ここでは、失業保険がもらえない代表的な10のケースを具体的に解説します。ご自身の状況と照らし合わせて確認してみてください。

ケース1:雇用保険の加入期間(被保険者期間)が足りない

失業保険を受給するための大前提として、一定期間、雇用保険に加入している必要があります。この期間が不足していると、他の条件をすべて満たしていても受給できません。

原則として、離職日以前2年間に、被保険者期間が通算して12ヶ月以上必要です。この「1ヶ月」は、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を指します。例えば、月給制の正社員であればほとんどの場合1ヶ月とカウントされますが、シフト制のパート・アルバイトの方は月によっては11日に満たない可能性もあるため注意が必要です。

ケース2:就職する意思や能力がないと判断された

失業保険は、「働く意思と能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態」にある人のための制度です。そのため、ハローワークでの手続きや面談の際に、就職する意思がないと判断されると受給資格を得られません。

具体的には、「しばらく休みたい」「趣味に専念したい」「良い求人があれば働く」といった発言は、積極的な求職活動の意思がないと見なされる可能性があります。

ケース3:病気やケガ、妊娠・出産ですぐに働けない

働く意思があっても、病気やケガ、妊娠・出産、育児などですぐに働ける状態にない場合も、失業保険は受給できません。これは、失業保険が「いつでも就職できる能力があること」を条件としているためです。

ただし、これらの理由で働けない場合は、救済措置として受給期間を延長する制度や、別の手当(傷病手当など)に切り替える制度があります。諦めずにハローワークに相談することが重要です。

ケース4:次の就職先がすでに決まっている(転職・再就職)

退職時点で、すでに次の就職先が内定している場合は「失業の状態」にないと判断されるため、失業保険を受給することはできません。たとえ入社日まで1ヶ月以上の期間が空いていたとしても、就職が確定している以上は受給対象外となります。

この期間の生活費に不安がある場合は、退職日と入社日を調整するなどの対策が必要です。

ケース5:自営業の開始準備や専念、会社の役員に就任した

フリーランスや個人事業主として独立する場合や、その準備に専念している場合も「失業の状態」には当てはまりません。雇用されることを前提とした求職活動を行っていないためです。同様に、会社の役員(取締役など)に就任した場合も、労働者とは見なされず、受給対象外となります。

ケース6:定年退職後、しばらく休養する予定

定年退職も離職の一つの形ですが、退職後に「しばらくはのんびりしたい」「旅行に行くので1年くらいは働かない」といったように、休養に専念する意思を明確にしている場合は、働く意思がないと判断され、受給できません。

定年退職後でも、働く意思を示し、積極的に求職活動を行えば受給は可能です。その場合は、ハローワークで求職の申し込みを行う必要があります。

ケース7:ハローワークで求職活動を行っていない

失業保険の受給中は、原則として4週間に1度の「失業認定日」にハローワークへ行き、求職活動の状況を報告する必要があります。この期間中に、定められた回数(原則2回以上)の求職活動実績がないと、失業保険は支給されません。

求職活動とは、求人への応募、ハローワークでの職業相談、セミナーへの参加などが該当します。単にインターネットで求人情報を閲覧しただけでは実績として認められないため、注意が必要です。

ケース8:不正受給と判断された

事実を偽って失業保険を受給しようとすると「不正受給」と判断され、支給が停止されます。例えば、アルバイトやパートで収入を得たにもかかわらず申告しなかったり、就職が決まった事実を隠して受給を続けたりする行為が該当します。

不正受給が発覚した場合、それ以降の支給が停止されるだけでなく、受給した金額の3倍(受け取った額+2倍のペナルティ)の返還を命じられるなど、厳しい罰則が科せられます。

ケース9:他の公的給付(傷病手当金・年金等)を受給している

原則として、失業保険と他の公的給付を同時に受け取ることはできません。例えば、健康保険から支給される「傷病手当金」や「出産手当金」、労災保険の「休業(補償)給付」などを受給している期間は、失業保険を受け取れません。

また、65歳未満で「特別支給の老齢厚生年金」を受給している場合、失業保険と年金のどちらか一方を選択する必要があり、両方を満額で受け取ることはできません。

ケース10:そもそも雇用保険の被保険者ではない

失業保険は、雇用保険の制度の一部です。そのため、雇用保険に加入していない方は受給できません。

例えば、個人事業主やフリーランス、会社の代表取締役、学生のアルバイト(条件による)などは、原則として雇用保険の適用対象外です。また、雇用契約を結んでいても、会社の怠慢で加入手続きがされていなかったというケースも稀にあります。給与明細で雇用保険料が天引きされているか確認しておくと良いでしょう。

【条件別】失業保険がもらえない状況を徹底解説

失業保険の条件について書類を確認する様子

失業保険がもらえないケースは、大きく「雇用保険の加入条件」「失業の状態の定義」「退職理由」の3つのカテゴリに分けて考えることができます。ここでは、それぞれの条件についてさらに詳しく解説します。

雇用保険の加入条件を満たしていない場合

前述の通り、失業保険をもらうためには、一定期間の被保険者期間が必要です。この条件は、退職理由によって異なります。

対象者 離職日以前の期間 必要な被保険者期間
一般離職者(自己都合退職など) 2年間 通算12ヶ月以上
特定受給資格者・特定理由離職者(倒産・解雇、正当な理由のある自己都合退職など) 1年間 通算6ヶ月以上

一般離職者の加入期間の条件

自己都合での退職や定年退職など、一般的な理由で離職した方は「一般離職者」に分類されます。この場合、退職日以前の2年間で、雇用保険に加入していた期間が通算して12ヶ月以上なければ、受給資格はありません。

特定受給資格者・特定理由離職者の加入期間の条件

会社の倒産や解雇、あるいは心身の障害や家族の介護など、やむを得ない理由で離職した方は「特定受給資格者」や「特定理由離職者」に認定されることがあります。この場合、受給条件が緩和され、退職日以前の1年間で、加入期間が通算6ヶ月以上あれば受給対象となります。

「失業の状態」にないと判断される場合

ハローワークが定義する「失業の状態」とは、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない状態」を指します。この定義に当てはまらないと、失業保険はもらえません。

就職の意思がない(求職活動の実績がない)

ハローワークの職員との面談で「しばらく休みたい」「勉強に専念したい」などと伝えたり、失業認定期間中に求人応募などの具体的な活動実績がなかったりすると、就職の意思がないと見なされます。

すぐに働けない健康状態(病気・ケガなど)

病気やケガの治療に専念しており、医師から就労の許可が出ていない場合は、「いつでも就職できる能力」がないと判断されます。

妊娠・出産・育児に専念する場合

妊娠・出産後、すぐに求職活動を開始せず育児に専念する場合は、失業保険の対象外です。あくまで求職活動ができる状態になってからが対象となります。

扶養の範囲内で働きたい希望がある場合

「夫の扶養の範囲内(年収130万円未満など)で働きたい」という希望自体は問題ありません。しかし、その条件に固執するあまり、応募できる求人が極端に少なくなる場合や、フルタイムの求人をすべて断るような場合は、就職の意思が低いと判断される可能性があります。柔軟な姿勢で求職活動に臨むことが大切です。

退職理由による給付制限

失業保険は、退職理由によって給付開始のタイミングが異なります。もらえないわけではありませんが、すぐに受け取れない期間があるため注意が必要です。

自己都合退職による給付制限期間

自身の都合で退職した場合、ハローワークに申請してから7日間の「待期期間」に加えて、原則として2ヶ月間(5年間のうち3回目以降の自己都合退職は3ヶ月間)は失業保険が支給されない「給付制限」があります。この期間は無収入となるため、退職前に十分な資金計画を立てておくことが重要です。

重責解雇(懲戒解雇)の場合

従業員が自己の責めに帰すべき重大な理由(横領、重大な経歴詐称など)によって解雇された「重責解雇」の場合も、給付制限の対象となります。この場合の給付制限期間は3ヶ月間です。

失業保険がもらえないかも?確認すべき3つの受給条件

受給条件のチェックリストを確認する人

これまで「もらえないケース」を中心に見てきましたが、ここでは視点を変えて、受給するためにクリアすべき3つの必須条件を再確認しましょう。ご自身がこれらの条件を満たしているか、チェックリストとしてご活用ください。

受給条件1:雇用保険の被保険者期間

まず最も重要なのが、雇用保険の加入期間です。

  • 原則として、離職前の2年間に通算12ヶ月以上の被保険者期間があること。
  • 会社の倒産や解雇、正当な理由のある自己都合退職の場合は、離職前の1年間に通算6ヶ月以上の被保険者期間があればOK。

この期間は、過去の職歴を通算できる場合もあります。不安な方は、ハローワークで自身の加入履歴を確認してもらうと良いでしょう。

受給条件2:ハローワークでの求職申込みと就職への積極的な意思

失業保険は、再就職を支援するための制度です。そのため、ハローワークで求職の申込みを行い、積極的に仕事を探す意思を示す必要があります。

  • ハローワークの窓口で求職の申込み手続きを完了させていること。
  • 「すぐにでも働きたい」という明確な意思を持っていること。
  • 失業認定期間中に、定められた回数以上の求職活動実績(求人応募、面接、セミナー参加など)を作ること。

「良い仕事があれば…」という受け身の姿勢ではなく、自ら積極的に行動することが求められます。

受給条件3:いつでも就職できる能力と環境があること

最後に、働くための心身の状態や環境が整っていることも条件です。

  • 健康状態が良好で、すぐにでも働くことができること。
  • 就職活動や就労を妨げるような事情(育児・介護など)がなく、環境が整っていること。

もし病気や育児などで一時的に働けない場合は、後述する「受給期間の延長」手続きを行うことで、働ける状態になった後に失業保険を受給できる可能性があります。

失業保険がもらえない場合の対処法【どうする?を解決】

「条件を満たせず失業保険がもらえない」「すぐには働けない」…そんな時でも、利用できる制度や対処法があります。諦めずにご自身の状況に合った方法を探してみましょう。

病気や妊娠が理由なら「受給期間の延長」を申請する

病気、ケガ、妊娠、出産、育児、親族の介護などの理由で、退職後すぐに働けない場合は、失業保険の受給期間を延長する手続きができます。

本来、失業保険を受け取れる期間は離職日の翌日から1年間ですが、この手続きを行うと、働けない期間をその1年間に加えることができます(最大で3年間延長可能、合計4年間)。これにより、働ける状態に回復してから、改めて失業保険の受給手続きを開始できます。

申請は、離職日の翌日から30日が経過した後に、本人の住所を管轄するハローワークで行う必要があります。診断書などの証明書類が必要になるため、早めに準備を進めましょう。

働けない状態が続くなら「傷病手当」に切り替える

ハローワークで失業保険の受給手続きをした後に、病気やケガで15日以上継続して働けなくなった場合は、失業保険の代わりに「傷病手当」という給付を受けられる可能性があります。

これは、健康保険の「傷病手当金」とは別の、雇用保険の制度です。失業保険と同額が支給されます。傷病手当を受けている期間は、失業保険の所定給付日数が消費されます。

ハローワークの決定に不服があるなら「審査請求」を行う

「会社都合なのに自己都合と判断された」「特定理由離職者として認められなかった」など、ハローワークの決定に納得できない場合は、不服申し立て(審査請求)をすることができます。

決定があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内に、各都道府県の労働局にいる雇用保険審査官に対して審査請求書を提出します。客観的な証拠(メールのやり取り、診断書など)があると、主張が認められやすくなります。

スキルアップを目指すなら「職業訓練」を受講する

失業保険を受給しながら、再就職に役立つ知識やスキルを無料で学べる「公的職業訓練(ハロートレーニング)」という制度があります。

職業訓練を受講すると、訓練期間中は失業保険の給付が延長されたり(条件あり)、自己都合退職による給付制限が解除されたりといったメリットがあります。また、失業保険の受給資格がない方でも、一定の条件を満たせば「職業訓練受講給付金」を受けながら訓練に参加できる場合があります。

生活に困窮する場合は他の公的支援を検討する

失業保険がもらえず、貯蓄も尽きて生活が困難になった場合は、他の公的支援制度の利用を検討しましょう。

  • 生活福祉資金貸付制度: 低所得者世帯などを対象に、生活費や住宅入居費などを無利子または低利子で貸し付ける制度。
  • 住居確保給付金: 離職などにより住居を失うおそれのある方に対し、家賃相当額を支給する制度。
  • 生活保護: あらゆる手段を尽くしても生活に困窮する場合に、健康で文化的な最低限度の生活を保障する最後のセーフティネット。

これらの相談は、お住まいの市区町村の役所や社会福祉協議会が窓口となります。

失業保険がもらえないケースに関するよくある質問

質問1:失業保険の審査は厳しいですか?

失業保険の審査は、法律や規則に基づいて行われるため、「厳しい」というよりは「厳格」です。受給条件を満たしているか、働く意思があるかなどを、提出書類や面談を通して客観的に判断します。事実を正直に伝え、積極的に求職活動を行っていれば、不当に不支給となることはありません。不安な点があれば、隠さずにハローワークの職員に相談することが大切です。

質問2:パートやアルバイトでも失業保険はもらえないのでしょうか?

パートやアルバイトといった雇用形態に関わらず、「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込みがある」という条件を満たしていれば、雇用保険の被保険者となります。そのため、離職前の被保険者期間など他の受給条件を満たしていれば、正社員と同様に失業保険をもらうことができます。

質問3:ハローワークで言ってはいけないことは何ですか?

就職する意思がないと誤解されるような発言は避けるべきです。具体的には以下のような内容です。

  • 「しばらく休養したい」「疲れたのでのんびりしたい」
  • 「趣味や資格の勉強に専念したい」
  • 「特定の職種や条件の仕事しか探すつもりはない」(過度に固執する場合)
  • 「すぐには働けない事情がある」(病気や介護など、延長申請すべき事情を伝えずにいる場合)

あくまで「再就職への意欲」を伝えることが重要です。

質問4:会社が離職票を発行してくれない場合、どうすればいいですか?

離職票の交付は会社の義務です。もし会社が発行を拒んだり、遅延させたりする場合は、まず会社に再度請求しましょう。それでも対応してもらえない場合は、ハローワークに相談してください。ハローワークから会社へ発行を督促してくれます。最終的に発行されなくても、ハローワークの職権で受給資格を決定してもらえる場合があります。

質問5:病気で退職した場合「特定理由離職者」と判定されるには何が必要ですか?

病気が理由で自己都合退職した場合、「特定理由離職者」と認められるには、「その病気によって業務を続けることが困難であった」という客観的な証明が必要です。具体的には、医師の診断書が最も重要な書類となります。診断書には、病名だけでなく「労務不能」「軽作業なら可」といった、就労に関する具体的な意見を記載してもらうと、ハローワークでの判断がスムーズに進みます。

質問6:失業保険をもらえない場合、扶養に入れますか?

失業保険を受給しないのであれば、配偶者や親族の健康保険の扶養に入ることができます。ただし、扶養に入るには、あなたの年収が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)であることなど、健康保険組合が定める条件を満たす必要があります。失業保険を受給する場合でも、基本手当の日額によっては扶養に入れる可能性がありますので、詳細は加入先の健康保険組合にご確認ください。


【まとめ】失業保険がもらえないケースを正しく理解し、次のステップへ進もう!

失業保険がもらえないケースは、主に「雇用保険の加入期間不足」「働く意思・能力がないと判断されること」「特定の退職理由」に起因します。この記事で解説した10のケースを参考に、ご自身の状況を客観的に確認することが大切です。

もし、もらえない条件に当てはまってしまった場合でも、すぐに諦める必要はありません。病気などが理由であれば「受給期間の延長」や「傷病手当」といった制度がありますし、スキルアップを目指すなら「職業訓練」という選択肢もあります。

最も重要なのは、不明な点や不安なことを一人で抱え込まず、ハローワークに相談することです。専門の職員があなたの状況に合わせたアドバイスをしてくれます。失業保険制度を正しく理解し、活用することで、安心して次のキャリアへ進むための一歩を踏み出しましょう

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この記事を書いた人

柏心療内科・精神科よりそいメンタルクリニックでは、患者様に寄り添った診察を心がけております。また、医療コラムを通じて医療系に関する情報の提供をできるように努めてまいります。