ADHDで疲れやすいのはなぜ?原因と対処法を徹底解説

他の人と同じようにしているだけなのに、なぜか自分だけ異常に疲れてしまう」「週末はいつも寝てばかりで何もできない」——。
もしあなたがADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を受けている、あるいはその傾向があると感じていて、このような慢性的な疲労感に悩まされているなら、それは決してあなたの怠慢や気合が足りないからではありません。ADHDの人が人一倍疲れやすいのには、脳の特性に根差した明確な理由があるのです。

この記事では、ADHDの当事者がなぜ疲れやすいのか、その脳と身体のメカニズムを7つの原因から徹底的に解説します。さらに、明日からすぐに実践できる具体的な対策を10個厳選してご紹介。この記事を読めば、自分の疲れの正体を理解し、エネルギーを上手に管理しながら、もっと楽に毎日を過ごすためのヒントが見つかるはずです。

目次

ADHDで疲れやすいのはなぜ?脳と身体の7つの原因

ADHDの特性を持つ人が感じる「疲れやすさ」は、単なる身体的な疲労だけではありません。その根底には、脳の働き方の違いが大きく関係しています。ここでは、ADHD特有の疲れやすさを生み出す7つの主要な原因について、一つひとつ詳しく見ていきましょう。

原因1:脳機能の特性による「脳疲労」

ADHDの疲れやすさの最も大きな原因は、脳、特に前頭前野の機能特性による「脳疲労」です。前頭前野は、注意のコントロール、行動の抑制、計画の立案といった「実行機能」を司る司令塔のような場所です。

ADHDの人の脳では、この実行機能が定型発達の人に比べて、より多くのエネルギーを必要とします。例えば、会議中に集中を維持しようとする時、ADHDの脳は、外部の物音や内部に浮かぶ無関係な思考といった「ノイズ」を遮断するために、常にフルパワーで働き続けなければなりません。

これは、古いスペックのパソコンで最新の重いソフトウェアを動かそうとしているような状態です。常にCPU使用率が100%に張り付いているため、すぐに熱暴走してフリーズしてしまう。ADHDの人の脳も同様に、日常生活を送るだけで脳のエネルギーを激しく消耗し、深刻な「脳疲労」に陥りやすいのです。この脳疲労が、全身の倦怠感や思考力の低下、気力の喪失といった形で現れます。

原因2:感覚過敏による外部刺激の過剰摂取

ADHDの特性を持つ人の中には、感覚が非常に敏感な「感覚過敏」を併せ持つ人が少なくありません。聴覚、視覚、触覚、嗅覚などが過敏であるため、他の人が気にも留めないような些細な刺激が、本人にとっては大きなストレスとなります。

  • 聴覚過敏: オフィスのキーボードを叩く音、時計の秒針の音、隣の人の話し声などが全て同じボリュームで聞こえてしまい、特定の情報に集中できない。
  • 視覚過敏: 蛍光灯のちらつき、カラフルなポスター、人の往来などが視界に入るだけで情報過多になり、目がチカチカして疲れてしまう。
  • 触覚過敏: 服のタグが肌に当たる感触、特定の素材のゴワゴワ感、人混みで他人の体が触れることなどが不快で、常に神経が張り詰めてしまう。

これらの無数の刺激を、脳は無意識のうちに処理し続けています。フィルター機能が弱い蛇口から水が溢れ続けるように、外部からの情報が脳に流れ込み続けるため、脳は休まる暇なく疲弊していくのです。

原因3:多動性・衝動性によるエネルギーの過剰消費

ADHDの「多動性」や「衝動性」といった特性も、エネルギーを過剰に消費する原因となります。

多動性は、じっとしていられない、常に体を動かしていないと落ち着かないといった形で現れます。貧乏ゆすりやペン回しといった小さな動きから、会議中にそわそわして席を立ってしまうような大きな動きまで様々です。これらの絶え間ない身体活動は、本人が意識していなくても、着実に体力を消耗させていきます。

また、衝動性は「思いついたらすぐ行動しないと気が済まない」という形で現れます。計画を立てる前に突発的に行動を始めてしまい、後からやり直しが必要になったり、遠回りになったりすることが少なくありません。このような非効率な動きの多さが、結果的に身体的・精神的なエネルギーの無駄遣いにつながり、疲労を蓄積させるのです。

原因4:不注意をカバーするための精神的消耗

「不注意」特性は、忘れ物やケアレスミス、話の聞き逃しといった形で現れます。「また何か忘れていないか」「大事なことを見落としていないか」と、常に頭の中でセルフチェックを繰り返す必要があり、これが大きな精神的負担となります。

例えば、家を出る前には「鍵は持ったか?スマホは?財布は?」と何度も確認し、仕事ではメールの宛先や添付ファイルを送信前に何度も見直します。他人から見れば「考えすぎ」と思われるかもしれませんが、本人にとっては過去の失敗体験からくる防衛本能であり、これをしないと強い不安に駆られます。

このように、定型発達の人が無意識にできることを、ADHDの人は膨大な意識と精神力を使ってカバーしているのです。この絶え間ない緊張状態が、目に見えない精神的エネルギーをじわじわと奪っていきます。

原因5:感情のコントロールに伴う精神的疲労

ADHDの人は、感情の起伏がジェットコースターのように激しくなることがあります。ささいなことでカッとなったり、急に落ち込んだりと、感情の波をコントロールすることに苦労する場合があります。これを「感情調節障害」と呼ぶこともあります。

ポジティブな感情であっても、喜びや興奮が最高潮に達すると、その反動でどっと疲れが出てしまうことがあります。ネガティブな感情の場合はさらに深刻で、怒りや不安、自己嫌悪といった感情に一度囚われると、なかなか抜け出せずに頭の中をぐるぐると駆け巡り続けます。

この「感情の嵐」に耐え、なんとか社会生活に適応しようと感情を抑え込む行為は、非常に大きな精神的エネルギーを消耗します。感情の波が過ぎ去った後には、まるで嵐の後のように、心身ともに疲れ果ててしまうのです。

原因6:併存疾患(うつ病・不安障害など)の影響

ADHDの人は、その特性からくる生きづらさやストレス、失敗体験の積み重ねにより、二次障害として他の精神疾患を併存しやすいことが知られています。

併存しやすい疾患 主な症状と疲労への影響
うつ病 気分の落ち込み、意欲の低下、不眠や過眠といった症状が、元々のADHDの疲労感をさらに増幅させる。
不安障害 過剰な心配や不安感が常にあり、心身が常に緊張状態になるため、リラックスできず疲労が回復しにくい。
睡眠障害 入眠困難、中途覚醒、過眠など。質の良い睡眠が取れないため、日中に強い眠気や倦怠感を感じる。

これらの併存疾患は、ADHDの疲れやすさと相互に悪影響を及ぼし、「疲れの悪循環」を生み出します。ADHDの特性で疲れ、疲れることで併存疾患の症状が悪化し、その症状がさらに疲れを増大させるというループに陥ってしまうのです。

原因7:身体的な緊張(体がガチチになる現象)

ADHDの人は、常に周囲の刺激に気を配り、自分の行動をコントロールしようと意識を張り巡らせています。この慢性的な精神的緊張が、無意識のうちに身体的な緊張、つまり筋肉の硬直を引き起こします

特に、首や肩、背中、顎の筋肉がガチガチに硬くなっている当事者は少なくありません。常に体に力が入っている状態なので、特別な運動をしなくても筋肉が疲労し、肩こりや頭痛、全身の倦怠感の原因となります。夜、ベッドに入っても体の力が抜けず、眠りが浅くなることもあります。この身体的な緊張が、疲労の回復を妨げ、翌日に疲れを持ち越す原因にもなっているのです。

ADHDの疲れやすさへの対策10選【セルフケアから治療まで】

ADHDの疲れやすさは、その特性に根差したものであるため、完全になくすことは難しいかもしれません。しかし、適切な対策を知り、実践することで、疲労感を大幅に軽減し、エネルギーをコントロールすることは十分に可能です。ここでは、セルフケアから専門的な治療まで、10の具体的な対策をご紹介します。

対策1:脳疲労を回復させる|こまめな休息とダウンタイム

脳疲労が大きな原因であるADHDの疲れには、「こまめな休息」が何よりも重要です。疲れ果ててから休むのではなく、疲れる前に戦略的に休憩を挟む「予防的休息」を意識しましょう。

  • ポモドーロ・テクニックの活用: 「25分集中して5分休憩する」というサイクルを繰り返すことで、脳がオーバーヒートするのを防ぎます。
  • ダウンタイムを設ける: 1日の終わりに、意識的に何もしない時間を作りましょう。スマホやテレビからも離れ、ぼーっとする、音楽を聴く、瞑想するなど、脳をクールダウンさせる時間が必要です。これは「何もしない」という積極的な回復行動です。

対策2:感覚過敏への対処|ヘッドフォンやサングラスの活用

感覚過敏による刺激の過剰摂取を防ぐためには、物理的に刺激をシャットアウトするアイテムが非常に有効です。

  • 聴覚過敏に: ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやヘッドフォン、耳栓などを活用し、周囲の雑音を遮断しましょう。通勤電車や集中したい作業中におすすめです。
  • 視覚過敏に: サングラスやブルーライトカットメガネは、強い光や蛍光灯のちらつきを和らげてくれます。帽子のつばで視界を狭めるのも効果的です。
  • 触覚過敏に: 肌触りの良い天然素材の服を選び、服のタグは切ってしまうなど、不快な刺激を減らす工夫をしましょう。

対策3:刺激を減らす環境調整を行う

外部からの刺激を減らすために、自分が多くの時間を過ごす環境を整えることも大切です。

  • デスク周り: 視界に入る情報を減らすため、机の上には今使っているもの以外は置かないようにしましょう。パーテーションで区切るのも有効です。
  • 自宅: 使わないものは収納し、部屋をシンプルに保ちましょう。照明を暖色系の間接照明に変えるだけでも、視覚的な刺激を減らしリラックス効果が高まります。

対策4:タスク管理とスケジュールの最適化

不注意や衝動性をカバーするための精神的消耗を減らすには、タスクやスケジュールを「見える化」し、頭の中のメモリを解放することが重要です。

  • タスクの細分化: 「企画書を作成する」といった大きなタスクは、「資料を集める」「構成を考える」「下書きをする」のように、具体的な小さなステップに分解します。これにより、何から手をつければいいか明確になり、行動しやすくなります。
  • ツールの活用: ToDoリストアプリやGoogleカレンダー、リマインダー機能などを積極的に使いましょう。やるべきことを外部ツールに記憶させることで、脳の負担を減らせます。
  • 時間的余裕を持つ: スケジュールは詰め込みすぎず、予定と予定の間に必ず移動時間や休憩時間を確保しましょう。予期せぬトラブルにも対応しやすくなり、精神的な焦りを減らせます。

対策5:生活習慣の改善(食事・運動・睡眠)

脳のパフォーマンスを安定させ、疲労回復を促すためには、基本的な生活習慣が非常に重要です。

食事:血糖値の安定と栄養バランス

ADHDの脳は、血糖値の乱高下に影響を受けやすいと言われています。血糖値が急激に下がると、集中力の低下やイライラを招き、疲労感を増大させます。

  • 低GI食品を選ぶ: 玄米、全粒粉パン、そばなど、血糖値の上昇が緩やかな食品を主食にしましょう。
  • タンパク質を意識する: 脳内の神経伝達物質の材料となるタンパク質(肉、魚、大豆製品、卵など)を毎食摂ることを心がけましょう。
  • お菓子やジュースは控える: 血糖値を急上昇させ、その後の急降下を招くため、できるだけ避けましょう。

運動:脳機能の活性化とストレス軽減

定期的な運動は、ADHDの症状緩和に効果があることが多くの研究で示されています。

  • 有酸素運動: ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動は、注意機能や実行機能を司る脳内物質(ドーパミンやノルアドレナリン)の分泌を促します。週に3回、30分程度から始めるのがおすすめです。
  • 運動でストレス発散: 運動は、体内に溜まったストレスホルモンを減少させ、気分をリフレッシュさせる効果もあります。体を動かすことで、精神的な緊張もほぐれます。

睡眠:質の高い睡眠で脳を休ませる

睡眠は、脳が情報を整理し、疲労を回復させるための最も重要な時間です。ADHDの人は睡眠障害を併発しやすい傾向があるため、特に意識的な工夫が必要です。

  • 睡眠環境を整える: 寝室は暗く、静かで、快適な温度に保ちましょう。遮光カーテンやアイマスク、耳栓などが役立ちます。
  • 就寝前のルーティン: 就寝1〜2時間前からは、スマートフォンやPCのブルーライトを避け、読書やストレッチ、ハーブティーを飲むなど、リラックスできる活動を取り入れましょう。
  • 起床・就寝時間を一定に: 休日でもなるべく同じ時間に起き、寝ることで、体内時計が整い、睡眠の質が向上します。

対策6:エネルギー配分を意識した活動計画

自分のエネルギーには限りがあることを認識し、計画的にエネルギーを使う「省エネ思考」を身につけましょう。

  • スプーンセオリー: 自分の1日のエネルギー量を「スプーン12本」のように仮定し、活動ごとに消費するスプーンの本数を決めます(例:通勤で2本、会議で3本)。これにより、エネルギーの残量を可視化し、使いすぎを防ぐことができます。
  • 優先順位をつける: 「今日絶対にやらなければならないこと」を1〜3つに絞り、午前中などエネルギーが高い時間帯に集中して片付けましょう。それ以外のことは「できたらラッキー」くらいの気持ちでいることが大切です。

対策7:薬物療法による症状の根本的コントロール

セルフケアだけでは改善が難しい場合、専門医の診断のもとで薬物療法を行うことも有効な選択肢です。ADHD治療薬(コンサータ、ストラテラ、インチュニブなど)は、不注意や多動性・衝動性といった中核症状を緩和する効果があります。

症状がコントロールされることで、注意を維持するための過剰な脳のエネルギー消費が抑えられたり、衝動的な行動による無駄な体力消耗が減ったりします。その結果、二次的に疲労感が大きく軽減されるケースが少なくありません。薬物療法は疲れを直接取る薬ではありませんが、疲れの原因となる特性に根本からアプローチする方法と言えます。

対策8:カウンセリング・認知行動療法(CBT)の活用

カウンセリングや認知行動療法(CBT)は、自分の特性への理解を深め、生きづらさからくるストレスや二次的な精神症状を軽減するのに役立ちます。

  • 自己理解を深める: カウンセラーとの対話を通じて、自分がどのような状況で疲れやすいのか、どのような思考パターンが自分を苦しめているのかを客観的に把握できます。
  • 具体的なスキルを学ぶ: 認知行動療法では、感情のコントロール方法、ストレスへの対処法(コーピング)、完璧主義の緩和、物事の捉え方を変える練習など、日常生活で使える具体的なスキルを学びます。これらのスキルが、精神的な消耗を減らす助けとなります。

対策9:当事者会やサポートグループへの参加

同じ特性や悩みを抱える仲間と繋がることは、大きな精神的支えとなります。

  • 共感と安心感: 当事者会では、「疲れやすいのは自分だけじゃなかった」という安心感や、他の人には理解されにくい悩みを共感してもらえる場です。孤独感が和らぎ、自己肯定感の回復につながります。
  • 情報交換: 他の当事者が実践している生活上の工夫や、仕事での乗り切り方など、実用的な情報を交換することができます。

対策10:疲労回復の裏技(冷水シャワーなど)

日々の対策に加えて、即効性のあるリフレッシュ方法を知っておくと便利です。

  • 冷水シャワー: 短時間の冷水シャワーは、交感神経を刺激し、血行を促進することで、脳を覚醒させ、一時的に倦怠感を吹き飛ばす効果が期待できます。いきなり全身は難しい場合、手や顔を冷水で洗うだけでも効果があります。
  • パワーナップ(短時間仮眠): 日中に強い眠気を感じた時は、15〜20分程度の仮眠をとるのが効果的です。それ以上寝てしまうと深い眠りに入ってしまい、起きた時にかえってだるくなることがあるので注意しましょう。

ADHDの疲れやすさとの向き合い方

ADHDの疲れやすさは、ライフステージや立場によって現れ方や対処法が異なります。ここでは「子供」「大人(社会人)」「家族」という3つの状況別に、疲れとの向き合い方を解説します。

子供が疲れやすい場合の原因と親ができるサポート

ADHDの子供は、学校という刺激の多い環境で1日を過ごすため、帰宅後にはエネルギーを使い果たしてぐったりしていることがよくあります。

子供が疲れやすい原因:

  • 授業中に集中を保つための過剰な努力
  • 教室のざわめきや掲示物などの刺激過多
  • 友達とのコミュニケーションにおける精神的消耗
  • ルールや時間割に合わせることへのストレス

親ができるサポート:

  1. 安心できる家庭環境を作る: 家は、子供が心身ともにリラックスできる「安全基地」であることが最も重要です。帰宅後に「早く宿題しなさい!」と急かすのではなく、まずは「お疲れ様」と声をかけ、ぼーっとしたり好きなことをしたりするダウンタイムを認めましょう。
  2. スケジュールを視覚化する: 言葉で指示するだけでなく、絵や文字で1日の流れや持ち物リストを壁に貼っておくと、子供が自分で見通しを立てやすくなり、親に何度も確認する手間や不安が減ります。
  3. 十分な睡眠を確保する: 子供の脳の回復には、質の高い睡眠が不可欠です。就寝時間を決め、寝る前はテレビやゲームを避けて静かに過ごす習慣をつけましょう。
  4. 学校と連携する: 子供の疲れの様子を担任の先生に伝え、可能であれば、刺激の少ない席にしてもらう、疲れた時にクールダウンできる場所を使わせてもらうなどの配慮をお願いすることも有効です。

大人のADHD:仕事や日常生活での疲れ対策

大人のADHD当事者は、仕事での責任、家事や育児など、複数の役割をこなす中で、慢性的な疲労に悩まされがちです。

仕事での疲れ対策:

  • 業務の見える化と細分化: 複数のタスクを抱える場合は、付箋やツールを使って全て書き出し、優先順位をつけましょう。一つひとつの業務を具体的な手順に分解することで、混乱を防ぎ、着実に進められます。
  • 得意を活かし、苦手は相談する: 自分の特性を理解し、過集中を活かせる単純作業やクリエイティブな仕事は積極的に引き受け、逆にマルチタスクや細かい事務作業が苦手であれば、上司や同僚に相談し、業務の調整や分担をお願いする勇気も必要です。
  • こまめな休憩と環境調整: 意識的に席を立ってストレッチをしたり、可能であればノイズキャンセリングイヤホンを使用したりして、脳をリフレッシュさせる時間を作りましょう。

日常生活での疲れ対策:

  • 完璧を目指さない: 家事や育児において、全てを完璧にこなそうとすると、すぐにエネルギー切れを起こします。「今日は掃除機はかけない」「夕食はレトルトで済ませる」など、意識的にハードルを下げ、「手抜き」を許可することが大切です。
  • ルーティン化と仕組み作り: 「鍵は玄関の決まったトレイに置く」「公共料金の支払いは口座振替にする」など、忘れ物やミスを防ぐための「仕組み」を作ることで、注意力を節約できます。

ADHDのパートナーや家族が疲れたと感じる時(カサンドラ症候群)

ADHD当事者だけでなく、その特性を身近で支える家族やパートナーも、精神的な疲労を感じることがあります。ADHDの特性が理解されず、コミュニケーションがうまくいかない状態が続くと、非当事者側が孤独感や自己肯定感の低下、心身の不調をきたす「カサンドラ症候群」に陥ることがあります。

もし、あなたがADHDの家族を支える立場で、「なぜ分かってくれないのだろう」「私ばかりが頑張っている」と感じて疲弊しているなら、それはあなただけの責任ではありません。

家族ができること:

  1. ADHDの特性を正しく理解する: パートナーの行動が「悪意」や「愛情不足」からではなく、「脳の特性」によるものであることを理解することが第一歩です。書籍や専門サイトで知識を得ることが助けになります。
  2. 自分の時間と空間を確保する: 相手を支えるためにも、まずは自分自身の心身の健康が大切です。意識的に一人の時間を作り、趣味や友人との交流など、自分がリフレッシュできる活動を続けましょう。
  3. 第三者に相談する: 家族だけで抱え込まず、専門の医療機関やカウンセリング、家族会などに相談しましょう。客観的なアドバイスを得たり、同じ立場の人の話を聞いたりすることで、気持ちが楽になります。

ADHDの疲れやすさに関するよくある質問(Q&A)

Q1. ADHDの人は常に疲れているのでしょうか?

A1. 全てのADHDの人が四六時中疲れているわけではありませんが、定型発達の人に比べて慢性的な疲労感を抱えやすい傾向があると言えます。特に、興味のないことや苦手なことに取り組まなければならない場面、刺激の多い環境に身を置いた後などに、強い疲労を感じることが多いです。一方で、自分の好きなことや興味のあることに対しては、驚異的な集中力(過集中)を発揮し、疲れを感じずに没頭できることもADHDの特性の一つです。ただし、過集中の後には、その反動で激しい疲労感に襲われることも少なくありません。

Q2. ADHDの疲れやすさに向いていない職業はありますか?

A2. 「この職業は絶対に向いていない」と断定することはできませんが、ADHDの特性上、困難を感じやすい職場の環境は存在します。例えば、以下のような環境です。

  • 頻繁なマルチタスクが求められる職場(例:複数の電話対応と来客対応を同時にこなす受付業務)
  • 急な予定変更や割り込みが多い職場(例:救急医療の現場)
  • 細かい事務作業や厳密なルーティンワークが中心の職場(例:経理、データ入力)
  • 騒音や人の出入りが激しいなど、刺激の多い職場

逆に、自分のペースで仕事が進められたり、アイデアや創造性を活かせたり、短期集中で成果を出せるような環境では、特性が強みになることもあります。職業名で選ぶよりも、「どのような環境で働くか」という視点が重要です。

Q3. ADHDの人は体がガチガチに硬いというのは本当ですか?

A3. 医学的に「ADHDの人は体が硬い」と証明されているわけではありません。しかし、この記事の「原因7」でも触れたように、ADHDの人は常に脳が緊張状態にあり、それが無意識のうちに全身の筋肉を硬直させてしまう傾向があります。特に、自分の行動や感情をコントロールしようと気を張っている時や、外部の刺激に過敏に反応している時は、体に力が入りがちです。その結果として、慢性的な肩こりや頭痛に悩まされたり、ストレッチをしてもなかなか体が柔らかくならないと感じたりする当事者は多くいます。

まとめ:ADHDの疲れやすさは対策可能|専門家への相談も検討しよう

ADHDの人が感じる人一倍の疲れやすさは、決して気のせいでも、怠けでもありません。それは、注意や行動をコントロールするために脳が常にフル稼働し、外部からの過剰な刺激を受け止め続けている結果なのです。

この記事で紹介したように、疲れやすさの原因は一つではなく、脳疲労、感覚過敏、多動性、不注意のカバーなど、様々な要因が複雑に絡み合っています。

しかし、その原因を正しく理解し、

  • こまめな休息とダウンタイムを設ける
  • 刺激をコントロールする工夫をする(物理的・環境的)
  • タスク管理や生活習慣で脳の負担を減らす

といった適切な対策を講じることで、その疲労感を大きく軽減することは可能です。

まずは、できそうな対策を一つからでも試してみてください。そして何より大切なのは、「疲れるのは自分の特性なのだから仕方ない」と自分を責めずに受け入れることです。

もし、セルフケアだけでは改善が難しかったり、日常生活に大きな支障が出ていたりする場合には、一人で抱え込まずに精神科や心療内科、カウンセリングなどの専門機関に相談することを強くお勧めします。専門家のサポートを得ることで、薬物療法や認知行動療法など、より効果的なアプローチが見つかるはずです。

あなたの毎日が、少しでも楽で快適なものになることを心から願っています。

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この記事を書いた人

柏心療内科・精神科よりそいメンタルクリニックでは、患者様に寄り添った診察を心がけております。また、医療コラムを通じて医療系に関する情報の提供をできるように努めてまいります。

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